ジャズのクラリネット奏者は相手を音で覚える

2002.6.16 村松淳彦

第4回(最終回)
<ジョージルイスとの再会>


Bunk Johnson BandのGeorge Lewis

 それから、1年後でしたか、会社が青山で近くだったこともあり、小生は渋谷のスウィングになんとなく習慣で顔をだしました。ちょうど、ジョージルイスが2回目に日本へきていたときでした。店に入ると、トイレからでてきたジョージルイスに、ばったりと出くわしました。ジョージルイスが、小生の顔を見て、「空港で演奏して送ってくれたときの…」と小生の音を覚えていると、話してくれました。彼が、小生と河合さんとの関係をききましたが、先輩という英語がわからず、面倒なので弟にしてしまいました。感激でしたね。1回・1曲しか演奏していないのに、1年以上たって、小生の音を覚えていてくれたのです。小生は感激して、感想を聞くのを忘れてしまっていました。小生の夢が、実現した瞬間でした。「音を覚えてもらえた」ということは、「聴けばその人とわかる音を持てた」ということですから、プレーヤにとって、「尊敬するプレーヤに、音を覚えてもらえた以上の喜び」はありません。また、本物のジャズプレーヤは、音で相手を覚えるということを実感した瞬間でもあります。それを、契機に、ジャズを演奏することしか念頭になかった小生が、ジャズの演奏を中断し、社会の仕事に専念するようになりました。本人としては、ちょっと中断するつもりが、40年も吹かなかったのですから、とても中断とは言えませんね。

4ヵ月間に渡り掲載いたしましたこの投稿これでひとまず終わりです。
村松さんたいへんありがとうございました。